教室からのお知らせ

 

保護者さまのウェルビーイングとは?

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

先生編、生徒さん編と続けてきたこのシリーズですが

今回は「保護者様のウェルビーイング」です。
レッスン室の外にいる、もう一人の主役
先生が生徒さんと向き合うのは、
ぽこあぽこの場合は月に2度、30分から1時間ほど。
でも、残りの時間、子どもさんのピアノの練習と向き合って下さっているのは保護者の方々なんです。

毎日の練習を見守り、ときには声をかけ、そして教室への送迎をしてくださり、
発表会では客席から誰よりもドキドキしながら見つめている。
保護者様は、レッスン室の外にいる「もう一人の主役」なんです。

ですが、ピアノ教室の中で、保護者様ご自身の気持ちが語られることは、あまりありません。
先生方も、保護者様を「協力をお願いする相手」として見ることはあっても、
ウェルビーイングを大切にされるべき一人の人として見る機会は、意外と少ないのではないでしょうか。

「普通のピアノじゃないとダメですか?」

以前、電子ピアノの講座についての記事でも書きましたが、
レッスンを始める前に、保護者様からこう聞かれることがよくあります。
「先生、購入するとしたら電子ピアノなんですけど、大丈夫ですか?」
私はいつも満面の笑みで、「ご準備してくださるのですね! ありがとうございます」とお答えします。
するとお母様は、ホッとしたお顔で
「よかった〜。普通のピアノじゃないとダメって言われたらどうしようと思っていました」とおっしゃるんです。

このやりとりから、私はいつも思います。保護者様は、私たちが想像する以上に、
小さな不安をたくさん抱えてレッスン室の扉を開けていらっしゃるんだな、と感じます

そして、こちらの言葉かけ一つで、沢山の不安を取り除かれて、たくさんの安心が生まれると私は思います。

保護者様の心の中にある、いろいろな「心配や不安」

では、保護者様はどんな気持ちを抱えていらっしゃるのでしょう。
ちょっと想像してみませんか?

「練習しなさい、って言うたびにケンカになる。こんなにぶつかるなら、やめさせたほうがいいのかな」
「同じ時期に始めたお友だちは、もう次の本に進んでいるのに…」
「月謝を払っているんだから上達してほしい。でも、楽しく続けてくれればそれでいい気もする」
「私の声かけ、これで合っているのかな。自分はピアノを習ったことがないから、どう手伝えばいいのかわからない」
「仕事も家事もきょうだいの世話もあって、練習を見てあげる時間がとれない」

どれも、子どもを大切に思っているからこそ生まれる気持ちです。
でも、こうした揺れを誰にも話せずに抱えていると、
保護者様の神経系もまた、少しずつ「赤」の状態が長くなり「心配や不安」が強くなります。

おうちでも、協働調整は起きている

「協働調整」は、先生と生徒さんの間だけで起きているのではありません。おうちの中でも、まったく同じことが起きているんです。

保護者様が焦っているとき、「練習しなさい」という言葉の硬さや、ため息、表情を通して子どもに伝わります。
子どものニューロセプションはそれを「ちょっと危ないかも」と感じ取り、身を守るモードに入ってしまう。
するとますますピアノに向かえなくなって、
保護者様はさらに焦る。そんな悪循環が、
知らず知らずのうちに生まれてしまうことがあるのです。

反対に、保護者様の気持ちが落ち着いていると、
おうちでの声かけは自然とやわらかくなります。
「今日はどの曲を弾くの?」「その曲、お母さん好きだな」。
そんな何気ない言葉が、子どもにとっては「ピアノを弾いている自分を見てもらえている」という安心になります。

つまり、生徒さんのウェルビーイングを支えるためには、
保護者様のウェルビーイングを支えることが欠かせないんです。

保護者様にも、「全部OK!」を
「自分にも全部ok!をつけてあげてください」とお伝えしました。
これは保護者様にも、まったく同じです。

毎週レッスンに送り出していること。電子ピアノでもアップライトでも、
おうちに楽器を用意してくださったこと。
発表会の日に、客席から見守ってくださること。
それだけで、保護者様はもう十分に、お子さんの音楽を支えていらっしゃいます。

ぽこあぽこ教室の合言葉は「来てくれただけでOK!」です。
これは生徒さんだけでなく、保護者様にも向けた言葉でもあります。
うちの教室を見つけた時点で「お母様、もう大丈夫です。安心してください」
とお伝えしています。

保護者様からよく、「家でどう関わったらいいですか?」と聞かれます。
特別なことをする必要はありません。
私がお伝えしている、ちょっとした工夫をご紹介しますね。

練習の「最初の1分」を大切にする
レッスンの最初に雑談の時間をとるのと同じで、おうちの練習も、いきなり宿題から始めなくて大丈夫です。
好きな曲を1曲弾く、適当に音を鳴らして遊ぶ。

「聴かせて」と頼んでみる
「練習した?」と確認するのではなく、「その曲、聴かせてほしいな」とお願いしてみてください。
子どもにとっては、練習が「やらされること」から「聴いてもらえること」に変わります。
弾き終わったら、上手かどうかではなく、「お母さん、その曲好きだな」と感想を伝えるだけで十分です。

ヘッドホンと録音を味方にする
電子ピアノなら、ヘッドホンを使えば、間違えた音を家族に聞かれる心配なく練習できます。
録音機能で「先週の自分」と聴き比べてみるのもおすすめです。
「前より上手になってるね」という発見を、親子で一緒に味わえます。

練習しない日があってもいい
体調が悪い日、学校で嫌なことがあった日、疲れて何もしたくない日。
そんな日は、無理に練習しなくても良いではないですか?
休むことも、長く続けるための大切な一部です。

ピアノの「場所」を見直してみる
ピアノが置いてある部屋は、子どもにとって居心地のいい場所でしょうか。
家族の気配がほどよく感じられる場所だと、子どもは安心して弾けることがあります。
逆に、ひとりで集中したい子もいます。
お子さんのタイプに合わせて、一緒に考えてみてください。

先生にできること ── 保護者様に「安心」を手渡す

では、先生は保護者様のウェルビーイングのために何ができるのでしょう。
私は、先生には保護者様に安心を手渡す役割があると思っています。
まるみえ流で大切にしていることをご紹介します。

1. 小さな成長を、言葉にしてお伝えする
保護者様は、毎回レッスンをご覧になっているわけではありません。
だからこそ、先生が見つけた小さな変化をお伝えすることには、大きな意味があります。
「今日、自分から『もう一回弾きたい』と言ってくれたんですよ」。
テクニックの上達だけでなく、気持ちや取り組む姿勢の変化もお伝えします。
それは保護者様にとって、何よりの⭕になります。

2. 練習できなかった週を、責めない
「今週は全然練習できなくて、すみません」と申し訳なさそうにおっしゃる保護者様は、本当に多いです。
そんなときは、「大丈夫ですよ。そういう週もあります。レッスンで一緒に弾けば、ちゃんと前に進めますから」。
罪悪感が軽くなるだけで、保護者様の表情はぐっとやわらかくなります。

3. 比べる相手は「少し前のその子」だとお伝えする
ほかのお子さんと比べて焦っていらっしゃる保護者様には、
「三か月前を思い出してみてください。この曲、最初は片手でも止まっていましたよね」と、
その子自身の歩みを一緒にふりかえります。成長のものさしを、横から縦に置きかえるのです。

4. 「練習しなさい」の代わりの言葉を、具体的にお渡しする
「何の曲を弾くか聴かせて」「今日はどこがいちばんうまくいった?」。
命令ではなく、興味を向ける言葉に変えるだけで、親子のやりとりは大きく変わります。

心理学者のジョン・ゴットマン博士は、子どもの感情に寄り添い、
その気持ちに名前をつけて受けとめる関わり方を「感情コーチング」と呼びました。
「弾きたくない!」と言う子どもには、まず「弾きたくない気持ちなんだね。今日は疲れちゃったのかな」と受けとめる。
そのうえで、「じゃあ、1曲だけ弾いてみる?」と一緒に考える。
こうした関わり方をお伝えすることも、先生にできるサポートのひとつです。

5. 保護者様ご自身の気持ちにも、耳を傾ける
ピアノの話をきっかけに、子育てのお悩みを打ち明けてくださる保護者様もいらっしゃいます。
先生はカウンセラーではありませんが、「そう感じていらっしゃるんですね」と受けとめるだけで、心が軽くなることがあります。

ピアノ講師になる前、私は販売の仕事をしていました。
人は「良い商品」ではなく「自分のことをわかってくれる人」から購入したいのだということを実感しました。

保護者様との関係も、まったく同じだと感じています。
こんなとき、どうする? 保護者様からよくあるご相談

最後に、保護者様からよくいただくご相談と、
私がどうお答えしているかをご紹介します。
先生方にとっては、保護者様への声かけのヒントになればうれしいです。

Q.「ピアノ、やめたい」と言い出しました。やめさせたほうがいいでしょうか?
まず、「やめたい」という言葉の奥にある気持ちを、ゆっくり聞いてみてください。
「今の曲が難しくてつらい」「練習の時間がとれなくて苦しい」「先生に叱られるのが嫌」。
「やめたい」は、多くの場合、「今、赤や青の状態がつらい」というサインです。

そのサインを受け取ったら、私にも教えてください。曲を変える、宿題の量を調整する、
しばらくは好きな曲だけを弾く。レッスンの中でできることは、たくさんあります。
それでもやめたい気持ちが続くなら、それはその子が自分で選んだ道として、尊重していいと思っています。

Q. 仕事が忙しくて、練習を見てあげられません
大丈夫です。毎日そばについていなくても、お子さんのピアノはちゃんと育ちます。
大切なのは、時間の長さではなく、関わる瞬間の「色」です。
忙しい朝に「昨日の曲、また聴かせてね」とひと言かけるだけでも、子どもには十分に伝わります。

Q. きょうだいで進み方が違って、つい比べてしまいます
きょうだいだからこそ、比べてしまう気持ちはよくわかります。
でも、ピアノの進み方は一人ひとり違って当たり前です。
上の子と比べるのではなく、「三か月前のその子」と比べてみてください。
どの子にも、その子なりの歩みがちゃんとあります。

Q. 電子ピアノのままで、本当に大丈夫でしょうか?
はい、大丈夫です。電子ピアノがあるから、ピアノレッスンを始められるご家庭がたくさんあります。
保護者様がご用意してくださった楽器で、お子さんが音楽を楽しいと感じられるレッスンをすることが、私たちの役目です。
レッスン室では、アコースティックピアノの響きにも触れながら、
いろいろな音を楽しめる耳を一緒に育てていきますので、どうぞご安心ください。

どのご相談にも共通しているのは、保護者様の不安を一つ取り除くことが、お子さんの安心につながるということです。

三者の輪 ── ウェルビーイングはめぐっていく

3先生・生徒さん・保護者様、それぞれのウェルビーイングを考えてきました。
最後に、三者のつながりをふりかえってみますね。
先生が「緑」でいると、レッスン室の空気がやわらかくなり、生徒さんは安心して鍵盤に向かえます。
生徒さんが小さな「できた!」を積み重ねていくと、その姿を見た保護者様が安心します。
保護者様が「緑」でいると、おうちでの声かけがやわらかくなり、子どもはおうちでもピアノに向かいやすくなります。

そして、生徒さんが伸び、保護者様から「ピアノを続けてよかった」という言葉が届くと、
先生もまた満たされて、次のレッスンへの力が湧いてきます。
こうして、ウェルビーイングは三者の間をめぐる輪になります。どこか一か所から温かさが生まれると、
それは輪を伝って全体に広がっていく。反対に、どこか一か所がつらくなると、その影響もまた全体に及びます。
だからこそ、誰か一人だけががまんする教室ではなく、三者それぞれが大切にされる教室でありたい。
そして、この輪を最初に温められるのは、やっぱり先生なんです。第1回を「先生」から始めたのは、このためでした。

今日のお話しのまとめです
保護者様は、レッスン室の外にいる「もう一人の主役」
おうちでも協働調整は起きている。保護者様の「緑」が、子どもの「緑」を支える
ポリ語の色の言葉は、誰も責めずに状態を共有できる、保護者様との共通語
先生には、保護者様に「安心」を手渡す役割がある
ウェルビーイングは、先生・生徒・保護者様の三者をめぐる輪
シリーズを終えて
ウェルビーイングは、特別なプログラムや大きな改革で手に入るものではありません。
レッスンの最初の「今日も来てくれてありがとう」。
お迎えのときの短い立ち話。レッスンとレッスンの間の、ひと呼吸。
そんな小さなことの積み重ねで、少しずつ、少しずつ育っていくものです。
まさに、poco a pocoですね。

先生も、生徒さんも、保護者様も、それぞれが「ここにいてよかった」と思える場所。
そして、それぞれが自分を好きになれる場所。
ピアノ教室は、そんな場所になれると私は信じています。

3回にわたってお付き合いくださり、ありがとうございました。

今日の一冊
『子どもの心と体を整える「ポリヴェーガル理論」入門』吉里恒昭 著/日本実業出版社
「ポリ語」を使って、ポリヴェーガル理論を子育てにどう活かすかを解説した一冊です。
子どものことで悩む保護者様だけでなく、毎日子どもと向き合う教育関係者に向けても書かれています。
保護者様におすすめするのはもちろん、先生が保護者様と「色の言葉」を共有するヒントにもなります。

講座のお知らせ
大人の生徒さんの心理に寄り添う関わり方を、ポリヴェーガル理論・ウェルビーイングの視点からお話しします。
続けたくなる大人のピアノレッスン ―集まる・続く・選ばれる 大人の心理に寄り添う指導のコツ―
日時:2026年11月19日(木)10:30〜12:30
会場:カワイ梅田 コンサートサロン「ジュエ」(大阪駅前第3ビル1F)
受講料:会員1,500円/一般2,000円(各税込) ※会員…音研会・PTNA・JPTA・カワイメンバーズ・KPA
お申込み・お問合せ:カワイ梅田 TEL 06-6345-8050

 
 

「上手」より「自分が好き」が続くレッスン

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

前回は、先生の神経系の状態がそのままレッスン室の「色」になる、というお話をしました。
今日はその「緑」のレッスン室の中で育つ、生徒さんのウェルビーイングについてです。

「ピアノを習っていてよかった」と思うのは、どんなとき?

大人になった生徒さんが、いつか「ピアノを習っていてよかった」と思い出してくれるとしたら。
それは、どんなときでしょう。
コンクールで賞をとったとき。難しい曲が弾けるようになったとき。
もちろん、それもすてきな思い出です。

でも私は、こんなふうに思い出してもらえたら、うれしいなと思って日々レッスンしています。。
「あのレッスン室にいると、なんだかホッとした」
「間違えても、先生はいつも待っていてくれた」
「ピアノを弾いている自分が、ちょっと好きだった」

ぽこあぽこピアノ教室がお約束しているのは、
「そして自分を好きになれること」です。
生徒さんにとってのウェルビーイングとは、上手に弾けることそのものではなく、
ピアノを通して自分を好きでいられることだと、私は考えています。

「ピアノのレッスンには、ウェルビーイングの要素が全部詰まっている」

ポジティブ心理学の第一人者、マーティン・セリグマン博士は、
ウェルビーイングを支える5つの要素を「PERMA(パーマ)」という言葉で表しました。
これをピアノのレッスンに置きかえてみると、とても身近なものに感じられるのです。

P(ポジティブな感情):「この曲、好き!」「弾けてうれしい!」と心が動く瞬間
E(没頭):気づいたら時間を忘れて弾いていた、という体験
R(よい関係):先生やおうちの方に、ありのままを受けとめてもらえる安心感
M(意味):「おばあちゃんに聴かせたい」「この曲で伝えたい」という想い
A(達成):昨日できなかった2小節が、今日弾けた喜び

どうでしょう。ピアノのレッスンには、ウェルビーイングの要素がひとつ残らず詰まっていると思いませんか?

でもね、この5つは、放っておいても自然に育つわけではないと思うのです。

レッスンの関わり方ひとつで、どれも育ちもするし、しぼんでもしまいます。
たとえば「A(達成)」。
課題が大きすぎれば「できない」が続き、達成どころか「どうせ私なんて」という気持ちを育ててしまいます。
「R(よい関係)」も、間違いを指摘されてばかりのレッスンでは、なかなか育ちません。

そして、この5つすべての土台になるのが、
教室がどういう状態なのか?ということなんです。

人がもっともよく学び、もっともよく人とつながれるのは、安心や安全を感じているときです。

レッスン室に入ったとたん指が動かなくなる。
新しい曲になると黙り込んでしまう。弾き始めがどんどん速くなる。
これは「やる気」や「集中力」の問題ではなく、神経系が身を守ろうとしているサインだと考えられています。

「そわそわ型」と「固まり型」、それぞれへの関わり方

レッスン中、そわそわと落ち着きがなくなっていったりしていく「そわそわ型」の生徒さんには「スピードを落とす」

弾き始めがどんどん速くなる。一度間違えると最初から弾き直そうとする。
「あ、違う!」と自分を責める言葉が多い。
こんなときの生徒さんの体は、エネルギーが上がりすぎている状態です。
先生がゆっくり、少し低めの声で話す
「いっしょに、ゆっくり息を吐いてみようか」と呼吸を合わせる
テンポをぐっと落として、先生が隣でカウントしながら弾く
弾き直しは「最初から」ではなく、「間違えたところの1小節前から」にする

赤のときに必要なのは、「もっとがんばれ」ではなく「ゆっくりでいいよ」というメッセージです。
先生のゆったりした体の状態が、協働調整で生徒さんに伝わっていきます。

固まり型の生徒さんには「小さく動き出す」
質問しても返事が小さい。楽譜を見つめたまま手が止まる。表情が乏しく、目が合わない。
こんなときの生徒さんは、エネルギーが下がって、身を守るために動きを止めている状態です。

いったん楽譜を閉じて、リズムの遊びをする
先生と連弾をして、「一人じゃない」を体で感じてもらう
得意な曲、大好きな曲を1曲弾いて、まず「できる自分」に戻る
「どっちの音が好き?」など、指さすだけで答えられる質問をする

「固まり型」の生徒さんにはいきなり大きく動かそうとしないことです。
小さな動き、小さな「できた」から、少しずつエネルギーを取り戻していきます。

どちらのタイプにも共通しているのは、技術指導の前に、
まず心を安心した状態に戻る時間をとるということ。
遠回りに見えて、実はこれがいちばんの近道だと思っています。

「悔しい」も「ドキドキ」も、ウェルビーイングの一部
ここで、ひとつ誤解のないようにお伝えしたいことがあります。
生徒さんのウェルビーイングは、「いつも楽しい」「いつもニコニコ」ということではありません。

思うように弾けない悔しさ。発表会の前の、胸がドキドキする緊張。間違えて泣いてしまう日。
こうした揺れも、子どもが育っていくうえで大切な経験です。
大切なのは、揺れないことではなく、揺れたときにキチンと安心出来る状態に戻ってこられること。

「そわそわ型」さんも「固まり型」さんも無理に先へ進めるのではなく、一度「戻る場所」へ戻ってから、もう一度挑戦する。
この「戻って、また挑戦する」をくり返すことで、子どもは自分で自分を立て直す力を身につけていきます。

これは、SEL(社会情動学習)教育で大切にされている力そのものです。
SELを推進するアメリカの団体CASELは、育てたい力として、
自己への気づき、
自己管理、
他者への気づき、
対人関係のスキル、
責任ある意思決定の
五つを挙げています。

自分の気持ちに気づいて、名前をつけて、整えていく。
ピアノのレッスンは、こうした非認知能力の宝庫なんです。
「やりたい!」を内側から育てる三つの土台

生徒さんのウェルビーイングに欠かせないのが、
内発的動機づけ、つまり自分の内側から湧いてくるやる気です。
大人のピアノレッスンの講座でもお話ししていますが、
心理学者のデシ博士とライアン博士の自己決定理論では、
人のやる気を内側から支える三つの欲求があるとされています。
これは子どものレッスンでも、まったく同じです。

自律性 ──「自分で決めた」という感覚
「今日はどっちの曲から弾きたい?」「この部分、強く弾く? それともやさしく?」
小さな選択の積み重ねが、「やらされているピアノ」を「私のピアノ」に変えていきます。

有能感 ──「できた!」という手ごたえ
ここで力を発揮するのが、スモールステップです。片手だけ、2小節だけ、ゆっくりだけ。
大きな課題を前にすると神経系は「無理かも」と身構えますが、ち
ょっと頑張れば届く目標なら、ドキドキは「ワクワク」に変わります。
そして、私が「マイピアノ楽譜」を大切にしている理由もここにあります。
その子の今の力に合わせて、その子のためだけに書いた楽譜は、
「先生は私のことをわかってくれている」「これなら絶対弾ける」という安心と手ごたえを、
同時に届けてくれます。生徒さんの目の前で書くので、「わかるまで書く」ことができるのも強みです。

関係性 ──「わかってもらえている」という安心
「先生は私の味方」「この教室にいていいんだ」。そう感じられることが、ほかの二つを支える土台になります。
ぽこあぽこ教室の合言葉「来てくれただけでOK!」は、まさにこの関係性のための言葉です。
この三つがそろったとき、子どもは誰に言われなくても、自分から鍵盤に向かうようになります。

電子ピアノも、生徒さんの「安心」の味方
ここで少し、おうちの練習環境についても触れておきたいと思います。
今、ぽこあぽこ教室に通う生徒さんの多くが、おうちでは電子ピアノで練習しています。
私は、電子ピアノをとても前向きに捉えています。
たとえば、ヘッドホンを使えば、「間違えた音を家族に聞かれたらどうしよう」というドキドキなしに、思いきり練習できます。
音量や時間を気にせずに音を出せることは、生徒さんの神経系にとって、実はとても大きな安心材料なんです。
録音機能もおすすめです。「先週の自分」と「今週の自分」を聴き比べてみると、自分では気づかなかった成長が聴こえてきます。
これは、そのまま有能感、つまり「できた!」の体験になります。
音色を変えて遊んでみるのも楽しいですね。いつもの曲をオルガンやチェンバロの音で弾いてみると、
子どもの耳がぱっと開いて、「この曲、こんな感じにも弾けるんだ」と、表現への興味が広がっていきます。
大切なのは、楽器の種類ではなく、その子が安心して音楽と向き合える環境があるかどうか。
そのうえで、レッスン室でアコースティックピアノの響きにも触れながら、
「いろいろな音を楽しめる耳」を一緒に育てていけたらいいなと思っています。

⭕は「結果」ではなく「あなた」に向ける
もうひとつ、ほめ方についても触れておきたいと思います。
心理学者のキャロル・ドゥエック博士の研究では、
「頭がいいね」と能力そのものをほめるよりも、努力や工夫といった過程に目を向けたほうが、
子どもが難しいことに粘り強く取り組めるようになることが示されています。
ですから、私の⭕は「上手だね」だけではありません。

「先週より指がしっかりしてきたね」
「この強弱、自分で考えたの? すてきだったよ」
「最後まであきらめずに弾けたね」
そして、間違えたときには「間違えたね」ではなく、「今、指がどこに行きたかった?」と一緒に観察します。
間違いは「恐いもの」ではなく「発見のきっかけ」。
こうした言葉の変換をくり返すうちに、
生徒さんの中に「間違えても大丈夫」が根づいていきます。

発表会は、ウェルビーイングを育てるチャンス
生徒さんのウェルビーイングを考えるとき、
発表会は特別な意味を持つ場だと私は思っています。
発表会は、緊張もするし、うまくいかないこともあります。
でも、だからこそ、生徒さんが「揺れて、戻って、また挑戦する」を体験できる、
またとない機会なんです。
そのためにいちばん大切にしているのが、選曲です。

難しすぎる曲を選ぶと、練習の過程がずっと「不安な状態」になってしまいます。
本番が近づくにつれて焦りが増し、ステージでは頭が真っ白に。
そんな経験が「もうピアノは嫌だ」につながってしまうこともあります。
かといって、簡単すぎる曲では「やりきった!」という手ごたえが生まれません。

私が意識しているのは、その子のレベル、その子の目標、そしてその子の「挑戦したい気持ち」の三つに合わせることです。
少しだけ背伸びが必要だけれど、スモールステップを重ねれば必ず届く。
そんな曲を一緒に選ぶことができたら、発表会はPERMAの5つの要素がすべてそろう、
一人ひとりの生徒さんにとってすばらしい舞台になると信じています。

曲選びの段階から、生徒さんに「どれが弾いてみたい?」と聞いてみてください。
自分で選んだ曲だからこそ、本番までの練習を自分のこととして頑張れるのです。
そして本番が終わったら、結果がどうであっても、まずは大きな⭕を。「最後まで弾ききったね」
「あそこの音、客席までちゃんと届いていたよ」。
この言葉が、次の一年への力になります。

一人ひとりのウェルビーイングは、違う形をしている

最後に、私がとても大切にしていることをお伝えします。
それは、ウェルビーイングの形は、一人ひとり違うということです。
人前で弾くのが大好きで、発表会が何よりの楽しみな子。コツコツ積み上げて、難しい曲に挑戦することに喜びを感じる子。
上手になることより、好きな曲をひとりで弾いている時間が何よりの癒やしの子。
忙しい毎日の中で、ピアノの時間だけはほっとできる、という子もいます。

どれが正しくて、どれが間違っているということはありません。

ぽこあぽこピアノ教室のビジョンは、「音楽を通じ、個性を大事に一人一人の想いを応援する」です。
その子にとってのウェルビーイングがどんな形をしているのかを、一緒に探していくこと。
同じ教本を使っていても、進み方は違っていい。
楽譜も、その子に合わせて変えていい。それが、先生にしかできない大切な役割だと思っています。

今日のお話しのまとめです
生徒さんのウェルビーイングは「上手」ではなく「自分を好きでいられること」
人は安心・安全を感じているときにしか学べない。
揺れたときに戻れる場所をつくる

自律性・有能感・関係性の三つが、内側からのやる気を育てる
⭕は結果だけでなく、過程とその子自身に向ける
ウェルビーイングの形は一人ひとり違う
次回は最終回。レッスン室の外で、毎日の練習を見守っていらっしゃる
「保護者様のウェルビーイング」についてお話しします。
実は、いちばん見落とされやすい存在なんです。どうぞお楽しみに。

今日の一冊
『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』エドワード・L・デシ、リチャード・フラスト 著/桜井茂男 監訳/新曜社
自己決定理論を提唱したデシ博士が、一般の読者に向けて書いた一冊です。
ごほうびや罰ではなく、「自分で選ぶ」ことがなぜ人を伸ばすのか。
生徒さんの「やりたい!」をどう育てるかを考えるとき、レッスンの声かけを見直すヒントになります。

 
 

第1回 先生が整うと、レッスン室の「色」が変わる それぞれのウェルビーイング

こんにちは、ぽこあぽこピアノ教室 中西美江です。
今日から3回にわたって、
先生・生徒・保護者様、三者のウェルビーイングに
ついてお話ししていきます。
どの講座でも最後に必ずこの「三者すべてのウェルビーイング」という視点をお話しさせて頂いております。

第1回は、「先生のウェルビーイング」からお話しさせて頂きます。

「ウェルビーイング」ってなんでしょう?

「ウェルビーイング」は、直訳すると「よい状態であること」です。
1946年に採択されたWHO(世界保健機関)憲章では、健康を「病気でないとか、
弱っていないということではなく、身体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しました。
この「満たされた状態」の部分が、英語の well-being です。
つまりウェルビーイングは、その瞬間の「楽しい!」「うれしい!」だけを指す言葉ではありません。
心と体と、人とのつながり。そのバランスがとれていて、
よい状態がこれからも続いていくことを大切にする考え方なんです。
日本でも、2023年に閣議決定された第4期教育振興基本計画で、
「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」が大きな柱のひとつになりました。学校教育の目標が、
「できるようになること」だけでなく、「その子がその子らしく、よりよく生きていくこと」へと広がってきているのです。
ピアノ教室も、この流れの中にあるべきだと私は考えています。
今日、いちばんお伝えしたいことは、ウェルビーイングは「生徒さんのため」だけの言葉ではないという事です。
先生にも、保護者様にも、同じように大切なもの。
誰か一人ががまんして成り立つウェルビーイングは、
長くは続かないからです。

先生、今日のご自分は何色ですか?

いきなりですが、質問です。
今、これを読んでくださっている先生ご自身は、
ポリ語でいうと何色でしょうか?
吉里恒昭さんの「ポリ語」では、安心・つながりの状態を「緑」、闘う・逃げるの状態を「赤」、固まる・動けなくなる状態を「青」で表します。
これまでのブログでは、主に「生徒さんが今何色か」を見る視点をお伝えしてきました。
でも、全国の先生方とお話ししていると、こんな声をよく聞くんです。
「生徒のためなら頑張れるんです。でも、気づいたら自分のことは後回しで」
「発表会前になると、夜もなかなか眠れなくて」
「発表会の準備って大変ですよね」
「誰にも相談できないまま、これでいいのかなと思いながらレッスンしています」
これって、赤や青の時間が長くなっているサインかもしれません。
ピアノの先生は、本当にまじめで優しい方が多いです。
生徒さんのことを考え、保護者様の気持ちにも心を配って、
自分のことはいちばん最後。
でも、本当は先生ご自身のウェルビーイングが一番大事だと私は思っています。

神経系は「うつる」 ・・・ 協働調整のお話

なぜ第1回が「先生」なのか。
それには、はっきりとした理由があります。
以前の記事「安全を感じている時にしか、人は学べない」で、
協働調整(co-regulation)という言葉をご紹介しました。
人の神経系は、相手の声のトーンや表情を無意識に読み取っていて、そばにいる人の状態に影響を受ける、という考え方です。
落ち着いた人のそばにいると、自然と自分も落ち着いてくる。
焦っている人のそばにいると、なんとなく自分もそわそわしてくる。「あぁ〜そういえば!」と心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そして、私たちの神経系は、本人も気づかないうちに「ここは安全か、危険か」を感じ取っています。
これがニューロセプションでした。
ということは!!
先生が緑でいるとき、その穏やかさは声や表情、待つ姿勢を通して生徒さんに伝わり、生徒さんのニューロセプションに「ここは大丈夫」と届きます。
反対に、先生が赤のとき、たとえ言葉はやさしくても、
声のわずかな硬さや表情のこわばりは、ちゃんと生徒さんに伝わってしまうのです。
つまり、先生の神経系の状態が、そのままレッスン室の「色」になるということ。
私が「レッスン前に先生自身が、今日の自分の状態をチェックすることも指導技術のひとつ」とお伝えしているのは、このためです。
先生のウェルビーイングは、
わがままでも贅沢でもなく、教室の安心の出発点なんです。

先生の「赤」は、こんなところに出ています

以前の記事で、生徒さんのサインを「そわそわ型」と「固まり型」に分けてご紹介しました。実は、先生にも同じようなサインがあります。
先生の「赤」(交感神経系が優位)のサイン
・自分でも気づかないうちに、話すスピードが速くなっている
・生徒さんが弾き終わる前に、口をはさんでしまう
・間違いが気になって、同じところを何度も弾き直させてしまう
・レッスンの最初が「宿題、どこまでできた?」から始まっている
・時計ばかり気にしている
先生の「青」(背側迷走神経系が優位)のサイン
・生徒さんの演奏を聴いていても、なんだか心に入ってこない
・「まあ、いいか」とその場をやり過ごすことが増えている
・新しい曲や教材を探すのが億劫になっている
・レッスンのあと、ぐったりして何もしたくない
いかがでしょう。
特に「宿題、どこまでできた?」から始まるレッスンは、
大人のピアノレッスンの記事でも書きましたが、
生徒さんを「できなかった言い訳」から始めさせてしまいます。
それは生徒さんにとってだけでなく、実は先生にとっても、
赤のスタートなんですね。
こうしたサインに気づいたときは、自分を責めるのではなく、「あ、今ちょっと赤かも」とポリ語でそっと認めてあげてください。それだけで、少し呼吸が深くなるはずです。

ピアノの先生が「赤」や「青」になりやすいわけ

では、どうしてピアノの先生は疲れやすいのでしょう。
私は、先生個人の性格や努力の問題ではなく、
この仕事ならではの「構造」があると思っています。
一つめは、ひとりで抱えやすいこと。
個人教室の先生は、同僚も上司もいない中で、レッスンも保護者対応も運営も、
すべてひとりで判断しています。迷ったとき、すぐに相談できる人がいない。
それだけで、神経系はずっと身構えた状態になりがちです。
二つめは、成果が見えにくいこと。
上達は一週間や一か月では見えないことも多いですよね。練習してこない週が続くと、
「私の教え方が悪いのかな」と自分を責めてしまう。でも本当は、成長はゆっくりで、波があって当たり前なんです。
三つめは、「結果」へのプレッシャー。
発表会やコンクールの出来が、先生の評価のように感じられてしまうことがあります。
その気持ちが強くなりすぎると、レッスンがいつの間にか、生徒さんのためではなく結果のためのものになってしまいます。
四つめは、境界線の引きにくさ。
レッスン時間外の連絡、振替の調整、楽譜の準備。自宅教室の先生なら、なおさら仕事と生活の境目があいまいになりますよね。
この四つが重なると、赤と青を行ったり来たりする時間が、
少しずつ長くなっていきます。

「これでいいのかな」という迷いも、先生の赤になる

もうひとつ、最近の先生方とお話ししていて感じるのが、
「時代の変化への迷い」です。
たとえば電子ピアノ。今、教室にお迎えする生徒さんの多くが、
電子ピアノでおうちの練習をしています。集合住宅での音の問題、共働きで練習時間が読めないこと、将来の引っ越しの可能性。
理由はご家庭によってさまざまです。
そんな中で、
「アコースティックピアノでないと、本当の音楽は育たないのでは」
「電子ピアノの生徒さんに、どう教えたらいいのかわからない」と迷っていらっしゃる先生は、決して少なくありません。
電子ピアノの講座でもお伝えしていますが、
その迷いは、先生ご自身が大切にしてきた音楽体験の裏返しです。否定する必要はまったくありません。
ただ、「これでいいのかな」という迷いを抱えたままレッスンをしていると、それは小さな赤として、ずっと先生の中に残り続けます。
だからこそ、
電子ピアノの仕組みや特性を知ることは、
先生自身の安心のためでもあるんです。タッチや音の違いは、
優劣ではなく機構の違い。「知らないまま指導する」から「知って寄り添う」に変わったとき、
先生の迷いは、自信に変わっていきます。
「違う」は「劣る」ではない。この視点は、生徒さんのためだけでなく、先生ご自身を楽にしてくれる視点でもあると思っています。

先生にも「全部いいよ」の精神で・・・

私がいちばん大切だと思っているのは、生徒さんにしていることを、自分にもしてあげることです。
ぽこあぽこ教室の「全部いいよの哲学」は、
できていないところより先に、できているところに⭕をつける
考え方です。これを、先生ご自身にも向けてほしいのです。
実は私自身、性格的に「励まし系」で、「大丈夫、大丈夫〜」と
明るく声をかけるタイプです。
でも、生徒さんにはそう声をかけられるのに、
自分に対しては「あのレッスン、もっとこうすればよかった」と、
反省会ばかりしていた時期がありました。
心理学者のクリスティン・ネフ博士は、自分への思いやりである「セルフ・コンパッション」を、三つの要素で説明しています。
・失敗したとき、友だちに声をかけるように、自分にやさしく声をかけること
・うまくいかないのは自分だけではなく、誰にでもあることだと知ること
・つらい気持ちを大げさにも、見ないふりにもせず、そのまま認めること
うまく伝えられなかったレッスンのあと、
「私はだめだ」と責める代わりに、
「今日は伝わりにくかったね。次は別の言い方を試してみよう」と、自分に声をかける。生徒さんにかける言葉と、同じ温度で。
「聞いて!まるみえ先生」で全国の先生方のお悩みにお答えしていると、
本当に多くの先生が同じことで迷い、同じことで自分を責めていらっしゃることがわかります。
悩むのは、先生が真剣に生徒さんと向き合っている証拠。
あなただけじゃないんです。

まるみえ流・先生が「緑」に戻るためのおすすめ

レッスン前に「今日の私は何色?」と確認する
生徒さんを迎える前に、ほんの数秒、自分の状態をポリ語で確認します。
「ちょっと赤っぽいな」と気づけるだけで、対応がずいぶん変わります。
気づくことが、調整の第一歩です。

境界線は、生徒さんを守るためのもの
どうぞ、境界線を引く勇気を持ってください。
夜遅くに届いた連絡に、すぐ返信しなければと焦ってしまう。
お休みの日も、振替の調整や楽譜の準備で気が休まらない。
生徒さんのためを思えば思うほど、先生の時間はどんどん削られていきます。
でも、先生がいつも赤のままでいることは、結局、生徒さんのためになりません。
協働調整のお話を思い出してください。先生の状態は、そのままレッスン室の色になるのでしたね。
たとえば、こんな小さな境界線から始めてみてはいかがでしょう。
・連絡への返信は、決まった時間帯にまとめてする
・振替のルールを、入会のときにわかりやすくお伝えしておく
・週に一度は、ピアノの仕事をしない時間をつくる
・「できないこと」は、申し訳なさそうにではなく、やわらかくはっきりお伝えする
境界線を引くことは、生徒さんや保護者様をないがしろにすることではありません。
むしろ、先生がいつも緑でいられるように整えることは、生徒さんを守ることそのものなんです。
発表会の規定や振替のルールをきちんと決めておくことも、
同じ意味があります。ルールがあるから、先生は一人ひとりの事情に振り回されずにすみ、
保護者様も「どうしたらいいんだろう」と迷わずにすむ。決まりごとは、三者みんなの安心のためにあるのだと思います。

今日のお話しのまとめです

・先生の神経系の状態は、協働調整によって、そのままレッスン室の「色」になる
・ピアノの先生が疲れやすいのは、性格ではなく「ひとりで抱える」などの仕事の構造による
・生徒さんに向ける「全部いいよ」を、先生ご自身にも向けてあげる
・レッスン前の「今日の私は何色?」が、いちばん手軽なセルフチェック
・境界線を引くことは、生徒さんを守ること

次回は、先生の「緑」の中で育つ、生徒さんのウェルビーイングについてお話しします。
「上手」より大切なものって何だろう? どうぞお楽しみに。

今日の一冊
『「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本 イライラ、不安、無気力、トラウマ…負の感情がラクになる』吉里恒昭 著/日本実業出版社(2024年)
以前もご紹介しましたが、講師編でもう一度。赤・青・緑の「ポリ語」は、
生徒さんの様子を読み取るときだけでなく、先生ご自身の状態をふりかえるときにも役立ちます。
忙しい毎日の中で、自分の「色」に気づくヒントがたくさん詰まった一冊です。

 
 

「固まる」はやる気の問題じゃない ポリヴェーガル理論で読み解くレッスン

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

おうちでは上手に弾けていたのに、レッスン室に入ったとたん指が動かなくなる。

発表会の舞台で、頭が真っ白になってしまう。
保護者の方からも、生徒さん本人からも、本当によく聞くお話です。
そんなとき、「もっと集中して」

「緊張しなくて大丈夫よ」と声をかけたくなりますよね。
私も性格的に「励まし系」なんで「大丈夫」とか
「そんなん気にしなくていいよ〜〜ハハハ〜」的な声掛けが多かったのです。
でも、今までのレッスン経験を通してわかったことは
こうした場面は、やる気や根性の問題ではないし、
明るすぎる「頑張ろう」メッセージが効果的なわけでもないのです。

その理由をわかりやすく説明してくれるのが、

私が興味を持ち、様々な角度から勉強した「ポリヴェーガル理論」です。

少し難しそうな名前ですが、

レッスンの見え方がガラッと変わる考え方なので、

ぜひ最後までお付き合いください。

ポリヴェーガル理論とは?
ポリヴェーガル理論は、1994年にアメリカのステファン・ポージェス博士が提唱した、

自律神経についての理論です。

日本語では「多重迷走神経理論」とも訳されます。

とても奥が深い一方で、正直に言うと専門的で難しい理論でもあります。

その難しい理論を、私たちが日常で使えるようにやさしく解説してくれているのが、

吉里恒昭さんの著書『「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本』です。

吉里さんは、体と心の状態を「赤・青・緑」の3色で表す「ポリ語」という

独自の言葉を使って、この理論を説明しています。

ポリ語

緑 腹側迷走神経系

(安心する・つながる)落ち着いている、人と関われる

笑顔で話せる、試してみようと思える

赤 交感神経系

(闘う・逃げる)ドキドキ、そわそわ、

イライラ早口になる、弾き急ぐ、ミスに過敏になる

青 背側迷走神経系

(固まる・動けなくなる)動けない、

何も感じない黙り込む、

ぼーっとする、手が止まる

私が「ポリ語」という言葉をとても気に入っているのは、

他の方にも伝えやすいというところなんです。

保護者様に「ポリヴェーガル理論」についてお話しする時も、

難しい専門用語ではなく、状態を色で表すことで、

「感じ方を共有する速度がとても早くなるのです。

子どもにも保護者の方にも、「いま、ちょっと赤になってるかな?」と

声をかければ、誰も責めることなく、状態をそっと共有できます。

また、吉里さんの本の土台にあるのは、心と体は密接につながっていて、

体にエネルギーが戻ってくると心も整っていく、という視点です。

心の問題を「心だけ」でなんとかしようとしない。

これはピアノのレッスンにも、そのまま当てはまる考え方だと感じています。

もうひとつ大切なのが「ニューロセプション」という考え方です。

これは、私たちの神経系が、本人も気づかないうちに

「ここは安全か、危険か」を感じ取っているしくみのこと。

つまり、子どもが固まってしまうのは「わざと」でも「怠け」でもありません。

神経系が自動的に「ここはちょっと危ないかも」と判断して、

身を守ろうとしているのです。だからこそ、

「頑張りなさい」という言葉だけでは、

なかなか状態は変わらないんですね。

レッスンで見えるサイン
「そわそわ型」と「固まり型」
私はレッスン中、生徒さんの様子を2つのタイプに分けて見ています。

そわそわ型(ポリ語の「赤」/交感神経系が優位)

弾き始めがどんどん速くなる

一度間違えると最初から弾き直そうとする

「あ、違う!」と自分を責める言葉が多い

椅子の上でからだが落ち着かない

固まり型(ポリ語の「青」/背側迷走神経系が優位)

質問しても返事が小さい、または返ってこない

楽譜を見つめたまま手が止まる

表情が乏しく、目が合わない

「わからない」「できない」で止まってしまう

たとえば、ある小学生の生徒さんは、新しい曲に入るたびに「どうせできへん」と

鍵盤から手を下ろしてしまう子でした。

以前の私なら「やってみないとわからないよ」と励ましていたと思います。

でも今は、それが固まり型のサインだとわかるので、

まず楽譜を閉じて、好きな音を3つだけ鳴らしてもらうところから始めます。

大切なのは、サインを「問題行動」として叱るのではなく、

「いま神経系がどこにいるか」を知る手がかりとして受け取ることです。

今日のお話しのまとめです。
子どもが固まったり、そわそわしたりするのは「やる気」ではなく、神経系の状態のあらわれ

神経系は、本人も気づかないうちに「安全か、危険か」を感じ取っている(ニューロセプション)

サインを叱るのではなく、「いまどこにいるか」の手がかりとして受け取る

「じゃあ、実際のレッスンでは何をすればいいの?」と思われた方も多いと思います。

次回は、私が今までのレッスンの中で大切にしてきた、ポリヴェーガル理論を活かした

具体的な関わり方をご紹介します。どうぞお楽しみに。

今日の一冊

『「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本

イライラ、不安、無気力、トラウマ…負の感情がラクになる』

吉里恒昭 著/日本実業出版社(2024年)

ポリヴェーガル理論を、体と心の調子を整えるために「実際に使える」形で解説した入門書です。
赤・青・緑の「ポリ語」で自分の状態を見る視点は、
レッスン中の子どもの様子を読み取るときにも、先生自身の状態をふりかえるときにも役立ちます。

ポリヴェーガル理論にはじめて触れる方に、まず手に取っていただきたい一冊です。

 
 

この秋も、教室の外へ・・・

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

教室のレッスンと、教室の外での講座活動のつながりをお話ししてきました。

今日は、この秋の講座のご紹介と、
ぽこあぽこピアノ教室を安心して選んでいただける理由をお伝えします。

「この秋の講座のご紹介」

9月28日には、平瀬楽器 藤原台センターさまで「もう迷わないピアノ導入教材の活用法と指導のコツ」をお話ししてきました。
この講座は、6月の山響楽器店 中山店さま(オンライン)、7月の東三河PTCさま(オリエントホール)に続いての開催です。


10月8日(木) 電子ピアノ時代のレッスンアップデート

そして10月8日(木)には、
ヤマハミュージック 大阪なんば店さまで、
新しい講座「今ある環境で音楽性を育てる 電子ピアノ時代のレッスンアップデート」をお話しします。
今、ピアノを習う生徒さんの多くが、ご家庭では電子ピアノで練習しています。
講座では、電子ピアノ時代に合ったレッスンの考え方、
電子ピアノの特性を活かす指導の工夫、
表現力を引き出す声かけとアプローチ
家庭環境に寄り添う練習と伝え方などを、
全国の先生方にお伝えします。
音色・録音・リズムといった電子ピアノならではの機能は、
使い方次第で、感性や表現力を育てる心強い味方になってくれるんです。

日時
2026年10月8日(木)10:30〜12:30(受付10:00)
会場
ヤマハミュージック 大阪なんば店 2Fサロン
定員
60名
受講料
会員3,000円・一般3,500円(税込)
お問い合わせ
ヤマハミュージック 大阪なんば店 TEL 06-6531-8202

保護者の皆さまの中には、
「うちは電子ピアノだけど、ちゃんと上達するのかな?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
大丈夫です。電子ピアノは、ピアノを始める扉を大きく広げてくれる楽器です。
ぽこあぽこピアノ教室では、ご家庭の環境に合わせた練習の仕方をお伝えしながら、
アコースティックピアノの響きの魅力にも少しずつ出会っていけるよう、レッスンしています。

さらにこの秋は、
大人の生徒さんがピアノを楽しく続けていくための「大人のピアノレッスン継続講座」を、
3つの会場でお話しします。

日程
主催・会場
10月13日(火)
東三河PTC主催 オリエントホール(愛知)

10月22日(木)
MPC楽器センター富山(Vimeo配信併用・ピティナ後援)

11月19日(木)
カワイ梅田(大阪)

ぽこあぽこピアノ教室には、2歳から80歳まで、幅広い年代の生徒さんが通ってくださっています。
「大人になってから、もう一度ピアノを」という方と日々向き合ってきたレッスンが、

この講座の土台になっています。

外で話せる先生だから、お子さまに届くこと

ピアノ教室を選ぶとき、何を基準にされていますか?
通いやすさ、月謝、先生の雰囲気。どれも大切です。
そのうえで、講座活動を続けている教室だからこそお約束できることが、
3つあります。

1. 理由をご説明できるレッスンです
全国の先生方に伝えるために、
指導の一つひとつを言葉にしてきました。
だから保護者の皆さまにも「なぜ今これをするのか」をきちんとお伝えできます。

2. 学び続けているレッスンです
講座のたびに新しい問いをいただき、
考え直し、教室のレッスンに還しています。
34年目の今も、レッスンは更新され続けています。

3. 一人ひとりに向き合うことが、いつも出発点です
講座でお話しする内容は、
すべて目の前の生徒さんとのレッスンから生まれたものです。
外に出るほど、目の前のひとりを大切にする気持ちは強くなっています。

「教室が大切にしていること」

ぽこあぽこピアノ教室の教室ビジョンは、
「音楽を通じ、個性を大事に一人一人の想いを応援する」。
そして、その先にあるブランドプロミスは、 「そして自分を好きになれること」 です。

ピアノが上手になることは、もちろん大切な喜びです。
でもそれ以上に、ピアノを通して「できた」を少しずつ積み重ね、
自分のことを少しずつ好きになっていってほしい。
poco a poco、少しずつ。
この想いは、教室の中でも外でも、ずっと変わりません。

まずは、教室の空気を感じにいらしてください

ぽこあぽこピアノ教室では、無料体験レッスンを随時受け付けています。
体験レッスンでは「マイピアノ楽譜」も実際に体験していただけます。

全国の先生方にお伝えしているレッスンを、
ぜひ、お子さまご自身で、
そしてあなたご自身で体験してみてください。

近鉄新大宮駅から徒歩1分。教室でお待ちしております。

▼無料体験レッスンのお申し込みはこちら お問い合わせ

公式LINEからも、お気軽にご質問・お申し込みいただけます。
友だち追加

 
 

ピアノの先生の悩みはお母さんの悩みと一緒?

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

昨日は、教室のレッスンから生まれたものが、全国の先生方へ届いていくお話をしました。
今日はその反対の流れ、「教室の外」から「教室の中」へ還ってくるもののお話です。

「聞いて!まるみえ先生」で向き合っていること
『レッスンプラスワン』では「聞いて!まるみえ先生」というコーナーを担当させていただいています。
全国のピアノの先生方から寄せられる指導のお悩みに、誌面でお答えするコーナーです。

セミナーの会場でも、休憩時間や終了後に、たくさんのご相談をいただきます。

ピアノの先生が悩まれることって、どんなことだと思われますか?

練習してこない。
「やめたい」と言い出した。
発表会で緊張して、実力が出せない。
譜読みがなかなか進まない。

あれ?と思われた保護者の方、いらっしゃいませんか?

そうなんです。先生方のお悩みは、
ご家庭で保護者の皆さまが感じておられるお悩みと、
ほとんど同じなんです。

答えるたびに、自分のレッスンが磨かれていく

全国の先生方のお悩みにお答えするとき、「なんとなく」では答えられません。
なぜそうなるのか。どうしたら変わるのか。

今までの経験から得た答えや考えを、一つひとつ言葉にして、筋道を立ててお伝えする必要があります。

この「言葉にする」作業が、実は私自身のレッスンを一番鍛えてくれています。
言葉にできたことは、教室で保護者の皆さまにも、
きちんと理由をつけてご説明できるようになります。
「先生はなぜ、ここで叱らないのか」
「なぜ、この曲をこの順番で弾くのか」
そのひとつひとつに、根拠があるレッスンです。

お悩みへの答えの根っこは、いつも同じです
どんなお悩みにお答えするときも、根っこにある考え方は変わりません。

まず、その子のありのままを受け止めること。
ぽこあぽこピアノ教室では、これを「全てオッケーの哲学」と呼んでいます。
人は、安心できている状態(腹側迷走神経系が働いている状態)でこそ、挑戦する力を発揮できます。
そして、大きな目標を小さく分けて、スモールステップで「できた」を重ねていくこと。

「練習しない」も「やめたい」も「緊張する」も、その子が今どんな気持ちでいるのかのサインです。
サインを叱るのではなく、
気持ちに寄り添って、一緒に次の一歩を探す。

これは、教室ビジョン 「音楽を通じ、個性を大事に一人一人の想いを応援する」 の実践そのものです。

保護者の皆さまへ向けて

• 練習の「量」より、ピアノに向かえたこと自体を認めてあげてください。「今日も弾いたね」の一言で十分です。

• 間違えたところより、「さっきより良くなったところ」を一つ見つけて伝えてあげてください。

• 「やめたい」と言われたら、すぐに答えを出さず、まず「何がしんどいの?」と聞いてあげてください。

子供さんの声を真摯に受け止め、一緒に考え、少しの変化も見逃さず
「オッケー!」の言葉をかける
その積み重ねの先に、
ブランドプロミス 「そして自分を好きになれること」 があると信じています。

 
 

「マイピアノ楽譜」はひとりの生徒さんから生まれました。

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。
先日、教室の外での活動についてお話ししました。
全国の楽器店さまでのセミナーや、専門誌での連載のことです。

今日から3日間は、その「中身」のお話です。
講座でお話ししていることは、いったいどこから生まれているのか?

答えは、とてもシンプルなんです。 いつもの教室の、いつものレッスンからです。

真っ白な5線ノートから始まるレッスン

ぽこあぽこピアノ教室のオリジナルレッスンに「マイピアノ楽譜」があります。
レッスンは、真っ白な5線ノートから始まります。
目の前の生徒さんに、今伝えたいことを、その子がわかる分だけ、その場で書いていく。

マイピアノ楽譜って、特別なものでもなんでもないんです。

でも、「私のために先生が書いてくれた」という楽譜には、不思議な力があります。
集中力がぐっと増して、「よし、がんばろう」という気持ちが、
その子の中から自然と湧いてくる。
外から「やりなさい」と言われて動くのではなく、
自分の内側から「やりたい」が生まれる。

「これを内発的動機づけといいます。」

一人のための工夫が、全国の先生方へ

この「マイピアノ楽譜」は、
2018年からピアノの先生のための情報紙『レッスンプラスワン』で連載させていただきました。
ヤマハ様、カワイ様、島村楽器様をはじめとする
全国の楽器店さまのセミナーでも、先生方にお伝えする機会を頂きました。

現在は「マイピアノ楽譜」だけに留まらず、様々な課題でのお話をさせて頂いています。

大事なことなので、もう一度言わせてください。
全国の先生方にお伝えしている内容は、
どれも「目の前のひとりの生徒さん」のために考えた工夫から生まれています。

最初から「講座のネタにしよう」と考えたレッスンは、ひとつもありません。
この子は、どこでつまずいているんやろう?
この子なら、どの順番で伝えたらわかるやろう?
そうやって一人ひとりに向き合ってきた34年の積み重ねが、
結果として、全国の先生方にも役立つ「形」になっていったのだと思います。
教室ビジョンそのものが、講座の土台です

ぽこあぽこピアノ教室の教室ビジョンは、 「音楽を通じ、個性を大事に一人一人の想いを応援する」 です。

一人ひとり違うからこそ、一人ひとりに合わせて書く。
マイピアノ楽譜は、このビジョンをそのまま形にしたレッスンです。
そして、一人ひとりに本気で向き合った経験が
現在、様々な場所でお話しする機会を頂いているのだと思います。

保護者の皆さまにお伝えしたいのは、ここです。
お子さまのレッスンは、講座のための「練習台」ではありません。
お子さまとのレッスンこそが、すべての「出発点」なのです。

「できた!」が少しずつ、poco a poco 積み重なっていく。
その先にあるのが、ぽこあぽこピアノ教室のブランドプロミス 「そして自分を好きになれること」 です。

9月以降の講座の予定です。
教室で得られた経験を、存分にお話ししてきます!

 
 

ピアノレッスンで養う「非認知能力」

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

非認知能力とは、テストの点数のように数値化できる「認知能力」に対して、
粘り強さ、自己肯定感、感情のコントロール、他者と関わる力、好奇心といった、数値では測りにくい力のことを指します。
近年、この非認知能力が、その後の人生の土台として非常に重要だということが、
教育の研究の中で注目されるようになってきました。

ピアノのレッスンでこそ、「非認知能力」を育てる場として最も相応しいと考えています
。
うまく弾けない箇所を、投げ出さずに練習し続ける粘り強さ。
発表会という大きな挑戦に向き合う勇気。う
まくいかなかったときに、それでも自分を責めすぎずに次に向かう力。
これらはすべて、ピアノという楽器を通して、日々のレッスンの中で少しずつ育まれていくものです。

これまで3回にわたってお話ししてきた「SEL教育」、「ポリヴェーガル理論」、「ウェルビーイング」などは、
この非認知能力を育てるための土台といっても良いと思います。

– 安心できる環境があるから(ポリヴェーガル理論)
– 自分の気持ちに気づき、対人関係を築けるようになり(SEL教育)
– 満たされた状態で音楽と向き合えるからこそ(ウェルビーイング)
– 粘り強さや自己肯定感といった、目に見えない力が育っていく(非認知能力)

この一連の流れこそが、
教室ビジョンである「音楽を通じ、個性を大事に一人一人の想いを応援する」の実践であり、
その先にある「そして自分を好きになれること」というブランドプロミスへの道筋だと
、私は考えています。

こうした考え方を、私は教室の中だけにとどめず、全国の楽器店での全国セミナーや、『レッスンプラスワン』(「聞いて!まるみえ先生」)での執筆を通じて、
全国のピアノの先生方にもお伝えし続けています。
全国の指導現場との対話を重ねながら磨いてきた指導理論を、
目の前のお子さまへのレッスンに、日々還元しています。

ぽこあぽこピアノ教室が大切にしているのは、単に「ピアノが上手になること」だけではありません。
音楽を通じて、一人ひとりのお子さまが、自分自身のことを少しずつ好きになっていけること。

そのお手伝いを、これからも「poco a poco(少しずつ)」続けていきたいと思います。

 
 

ウェルビーイングとは?

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

ウェルビーイングとは、ひとことで言うと「心身ともに満たされ、良い状態にあること」を指す言葉です。
単に「病気ではない」「困っていない」ということではなく、
その人がその人らしく、いきいきと、幸福感を持って過ごせているかどうか、という視点です。

ピアノ教室というと、
「どれだけ上手に弾けるようになったか」
「どれだけ難しい曲が弾けるようになったか」が評価軸になりがちです。
もちろん、技術の上達も大切な喜びの一つです。

でも私は、それと同じくらい、
「この子は今、ピアノを通じて満たされているだろうか」という視点を
大切にしたいと思っています。

上達だけを追いかけると、
時に「もっと、もっと」と際限のないプレッシャーになってしまうことがあります。

一方でウェルビーイングという視点を持つと、
「今日は苦手なところに向き合えた」
「発表会で緊張したけど、最後までやり切れた」
「お友達の演奏を聴いて素敵だと思えた」

そうした一つひとつの経験そのものに、価値を見出すことができます。
そして、その一つ一つに価値があるという事を生徒さんたちにお伝えし
日々の暮らしに「ウェルビーイング」を意識してもらうことをレッスンの目標の一つにしています。

これはまさに、教室ビジョンである「音楽を通じ、個性を大事に一人一人の想いを応援する」の実践そのものです。

上達の速度も、感じ方も、一人ひとり違います。その違いを大事にしながら、その子なりの満たされ方を応援する。
そうした関わりの積み重ねの先に、「そして自分を好きになれること」というブランドプロミスがあると考えています。

ウェルビーイングの視点は、近年、教育の世界でも大きく注目されているテーマです。

私自身も、楽器店様でのセミナーで、全国の先生方に「技術指導とウェルビーイングは両立できる」ということをお伝えしています。
又ピアノのレッスンのための情報紙レッスンプラスワン』の連載でも繰り返し取り上げているテーマです。

次回、最終回は「非認知能力」について、そしてこの4回のまとめとしてお話ししたいと思います。

 
 

ポリヴェーガル理論とは?

奈良・新大宮ぽこあぽこピアノ教室です。

ポリヴェーガル理論とは、私たちの自律神経が、安全を感じているときと、
危険や不安を感じているときとで、まったく違う働き方をする、という理論です。
人は安心・安全を感じている状態(腹側迷走神経系が優位な状態)でこそ、
他者とつながり、学び、挑戦する力を発揮できるとされています。
逆に、緊張や不安でいっぱいの状態では、どれだけ「頑張れ」と声をかけても、
本来の力は発揮されにくいのです。

これは、ピアノのレッスンにもそのまま当てはまります。
「間違えたら怒られるかもしれない」
「うまく弾けないと恥ずかしい」
そんな不安を抱えたままの環境では、どんなに優れた教材を使っても、生徒さんたちの力は十分に引き出せないのです。

私は、レッスンの中で「全てオッケーの哲学」を大切にしています。
これは、まず生徒さんがたのありのままを受け止め、否定から入らないという私自身の指導姿勢です。
「できた・できない」の前に、「ここにいてくれてありがとう」「今日も来てくれたね」という安心感を土台に置く
。その安心の土台があってはじめて、子どもたちは自分から挑戦し、伸びていくことができます。

これは、教室ビジョンの「個性を大事に一人一人の想いを応援する」という言葉の、いわば神経科学的な裏付けをしていると考えています。
そして、安心できる場で少しずつ挑戦を重ねていくからこそ、

「そして自分を好きになれること」というブランドプロミスにたどり着けるのだと思っています。

ちなみに、私が「poco a poco(ポコ・ア・ポコ=少しずつ)」という言葉を教室の理念に掲げているのも、
この考え方と深くつながっています。安心できる環境の中で、スモールステップで、少しずつ。
それが、無理なく力を伸ばしていく一番の近道だと、今までの指導経験からも実感しています。

こうした自律神経の視点も、全国の先生方向けのセミナーや専門誌の連載でも
必ず繰り返しお伝えしているテーマなんです。

次回は「ウェルビーイング」について、教室での実践とあわせてお話しします。